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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)107号 判決 1968年10月24日

控訴人 千葉雑穀飼糧商業協同組合

他八名

右控訴人九名訴訟代理人弁護士 小玉治行

被控訴人 鈴木源兵衛

右訴訟代理人弁護士 須賀利雄

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

原判決主文第一、二、五項を次のとおり訂正する。

一、被控訴人に対し、控訴人千葉雑穀飼糧商業協同組合は金二七一万五七二三円を、控訴人木竜元作、同丸一物産株式会社、同午玖久夫は各金三七万七、〇四六円を、控訴人岩沢作次郎、同花島利雄は各金二五万二七六一円を、控訴人長谷部秀明、同長谷部健二は各金一二万六、三八〇円を、控訴人小林義一は金一二万四二八五円を、それらに対する昭和四〇年七月二三日(但し控訴人牛玖久夫の分については同月二五日)から各完済まで年五分の割合による金員を附加して支払え。

二、原判決は、被控訴人において、控訴人千葉雑穀飼糧商業協同組合に対し金五〇万円、控訴人木竜元作、同牛玖久夫、同丸一物産株式会社に対し各金一〇万円、控訴人岩沢作次郎、同花島利雄に対し各金七万円、控訴人長谷部秀明、同長谷部健二、同小林義一に対し各金四万円を供託するときは、その者に対し、主文第一項につき、仮に執行することができる。

事実

<全部省略>

理由

当裁判所の判断は、次の点を附加補充するほか、原判決理由第一記載(但し原判決理由第一の三の(3)末尾四行及び同(4)を除く)と同一であるから、ここに、これを引用する。

一、控訴人は本件競落代金の配当は違法であると主張するが、右の競落代金が商工中金の抵当および根抵当債権の合計額に足らないことは、算数上明らかであるから、配当の違法の有無は被控訴人の求償権の行使に影響を与えない。

二、前認定(原判決理由第一の三の(1)、(2))によれば、被控訴人は昭和二八年六月一〇日実弟鈴木鶴吉より本件土地の贈与を受けたが、所有権移転登記が実行されず、ために右鶴吉を相手取り昭和三一年中本件土地の所有権移転登記手続の履行を求めて訴訟を提起し、昭和三八年九月被控訴人勝訴の判決確定を得て、ようやく昭和三九年二月一四日前記贈与を原因とする所有権移転登記をしたが、その間鈴木鶴吉は控訴人である本件組合(代表者控訴人木竜元作)の委託を受けて訴外商工中金に対する本件組合の債務を担保するため、本件土地に順位一番ないし三番の根抵当権、抵当権を設定した。ところが本件組合は右債務の弁済ができず本件土地は前記商工中金により抵当権の実行がなされ、競落の段階に至った。被控訴人は右段階で取得した同人の前記所有権移転登記をもってしては、前記商工中金の抵当権等に対抗できず、所有権を失うので止むなく、被控訴人自身本件土地を競落した。そして右競落代金は手続費用を控除した残額全部が前記商工中金に対する本件組合の債務に弁済充当された(この点は争がない)。というのであって、このような場合は、被控訴人が本件土地の、本来の所有者というべきであり、前記鈴木鶴吉が本件組合の委託をうけて本件土地に抵当権を設定した行為(物上保証)は、被控訴人との関係においては無権代理行為ともみられ、被控訴人は本訴請求によって右鶴吉の無権代理行為を追認したとも解し得べく、求償関係においては、被控訴人は委託をうけた物上保証人というを妨げない。そして、物上保証人が抵当権の実行によって不動産の所有権を失うにいたった場合には、弁済に準じて民法第五〇〇条第五〇一条の代位権の行使が許されることは当然であるから、被控訴人は本件土地を競売されたことによる出捐(競落代金二七一万五七二三円)を債務者たる控訴人の本件組合に求償し、また訴外商工中金に代位して連帯保証人であるその余の控訴人らに対し、その負担部分を請求することが許されるわけである。

よって右と同旨の原判決は相当であって本件控訴は理由がない<以下省略>。

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